原子力発電をベースロード電源に 2014.2.25
政府はエネルギー基本計画を策定し、原子力発電を重要なベースロード電源に位置付けることを発表しました。その背景などについて紹介します。
原発は「重要なベースロード電源」エネ基本計画案
安倍政権は25日、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけるエネルギー基本計画の政府案を決めた。安全が確認された原発は活用していく姿勢を改めて示した。与党での議論を経て、来月中の閣議決定を目指す。
この日の原子力関係閣僚会議で了承された。基本計画は国の中長期のエネルギー政策の方向性を定めるもので、経済産業省が昨年末に原案を固めた。「原発偏重だ」との与党内の批判を受けて表現を微修正したが、原発を活用する基本姿勢は維持した。
茂木敏充経済産業相は記者会見で「方向性が変わったとは認識していない」と述べた。
参考記事:朝日新聞
2月25日、政府は「原子力関係閣僚会議」を開いて、国の中長期エネルギー政策の指針である「エネルギー基本計画」の政府案を決定しました。政府案では原子力発電を「重要なベースロード電源」とし、今後は安全性を確認できた原子力発電所から順次再稼働させることも明記されています。
昨年末の有識者会議では、原子力発電を「基盤となる重要なベース電源」として位置付けていました。しかし、原発推進の色合いが強すぎるという批判もあって「基盤となる」という部分を削除し、「重要なベースロード電源」へと変更されました。
現在は原発ゼロの状態が続いており、電気エネルギーの供給は老朽化した火力発電所を再稼働させることでまかなっています。ただし石油・石炭の輸入費高騰が電気料金の押上げをまねいているということが懸念されており、産業界からは原発再稼働を積極的に推進する動きもあります。
参考リンク
・朝日新聞:原発新設の必要性に言及 経団連・米倉会長
ただし与党内からも原発推進に対する批判の声もあり、今後は原子力発電所への依存度を減らす方向性となっています。「脱原発・原発ゼロ」に関しては、今後のエネルギー事情を踏まえながらも原子力発電を活用するという方向性が決まったことで一歩遠ざかることとなりました。
ニュースを読むポイント:ベースロード電源
今回のエネルギー基本計画で明記された「ベースロード電源」とは、季節や昼夜に関わらず常に安定した電力を供給できる電源という意味を持っており、「ベース電源」と基本的に同じ意味合いとなります。

電気エネルギーの需要量は一日の中の時間帯によって変化しますが、需要量に合わせてさまざまな発電システムを組み合わせ電気エネルギーの供給量を調整しています。
ピーク時間帯に合わせて供給されるものは「ピークロード電源」と位置付けられており、「蓄電池」や「揚水発電」が主なピークロード電源となっています。残念ながら太陽光発電は出力量が不安定なことから、現段階ではピークロード電源として位置付けられていません。
基本的に必要とされる電力エネルギーは安定的なベースロード電源から供給されるものとし、ベースロード電源を補完する形で日中の電力消費の変化に対応するのが「ミドルロード電源」です。ミドルロード電源は主として火力発電所が担っています。
電源の種類 | 主な発電システム | 役割 |
---|---|---|
ピークロード電源 | 蓄電池 揚水発電 |
ピーク時間帯に合わせて電力を供給する |
ミドルロード電源 | 火力発電 | ベース電源を補完しながら電力需要に合わせて電力を供給する |
ベースロード電源 | 原子力発電 火力発電 地熱発電 |
年間を通じて時間帯を問わず安定的な電力を供給する |
2013年9月から再び原発ゼロの状態が続いており、現在は火力発電所がベースロード電源の役割も担っています。しかしながら燃料高騰から電気料金が値上げされており、CO2排出の問題も懸念されていることから今回のエネルギー基本計画策定に至りました。
原子力発電は安価で安定した電気を供給できるというメリットがありますが、原子力発電所の安全性や使用済み核燃料の最終処理などの課題(デメリット)も残っています。ある世論調査では原発再稼働に53%が反対、39%が賛成というデータもあります。
発電方法によって経済性や安全性、エネルギー資源の枯渇問題などさまざまなメリットとデメリットがあります。それぞれの発電システムを最適な形で組み合わせる「エネルギー・ベストミックス」は、今後の原子力エネルギー政策によって変更されることになります。
太陽光発電システムはまだまだ普及が進んでいませんが、エネルギー源のリスクがなく家庭で安定したエネルギーを確保することができます。他にもさまざまなメリットをもたらしてくれる発電方法なので、今後は社会に大きく貢献できる電源となり得る可能性を秘めています。
参考リンク
・資源エネルギー庁:エネルギー・ベストミックスと総合的視点の必要性